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【概要】
PBP(Paris–Brest–Paris Randonneur)は、言わずと知れた?フランスで4年に1度開催されるブルベで、ブルベの最高峰とされている(らしい)。世界中のブルベの元締めであるACP(Audax Club Parisien)が主催している。

コースはパリ~ブレストの往復約1200km、獲得標高は10000mほど。今年2019年は全体で約6700人、日本人は400人ほどが参加したようだ。

部門は80時間、84時間、90時間が選べるが、私はもちろん90時間を選択。結果的には88時間28分での完走となった。

よく言われるように、日本で開催される普段のブルベとはかなり違う。テキトーに列挙すると、
  • PCは巨大で、バイキングレストランや仮眠所、シャワーなどの設備が設けられている。
  • バイキングは結構並ぶ。このおかげでPC滞在時間が1時間以上となることも。
  • 食事はマカロニパスタ、リゾット、果物、サンドイッチ(フランスパンにハムやチーズを挟んだもの)など。100%口に合うとは言えないが、決して美味しくないわけではない。さっぱりしたもの、旨味のあるものは少ない
  • 私設エイドが多数見られる。厳密にはPC以外でのサポートは禁止だが、PBPでは黙認されているようで、何度もお世話になる。
  • 8月開催だが、夜間は寒く、5℃くらいになることも。昼間は30℃弱程度であまり暑く無い(開催年によると思う)。
  • 平地は少なく、緩い登りか下りを延々と繰り返す。
  • 場所と時間問わず、色んな場所で色んな人が仮眠している。PCの通路、道端、草原、ATMなどなど。私は食事のついでに椅子に座ったまま寝ることが多々あった。むしろ、仮眠所が混雑していてそうせざるを得ないことも。
  • プロレースさながらの大集団が形成されることがある。完全に道路を占領しているが、クラクションを鳴らすクルマはほぼ無く、むしろ応援しながら追い越すクルマも。
  • 歓迎と応援が凄まじい。自転車が国民的スポーツとして認識されているのを感じる。
  • PCオープンとクローズの時刻は当然定められているが、実際はゴール時刻が間に合っていれば認定されるらしい?
  • 日本のランドヌールと比べると、下りでがっつり漕いでスピードを稼ぎ、登りはかなりゆっくり登る人が多い。
  • 時折、若者が突然バトルを始める。登りで仕掛けたり、下りで仕掛けたり。
こんなところか。

前回のPBPが開催されたのが、私がブルベを始めた2015年。当時ももちろんPBPのことは知っていて、4年後は出場したいと思っていた。ようやく念願が叶い、そしてこのPBPを完走したことでR5000とR10000の受賞条件を揃えることができた。
このブログでは、概要・準備、出国〜スタート前、パリ〜ブレスト、ブレスト〜パリ・帰国の4つに分けて記録を残すことにしたい。

【詳細リンク】
距離:1227.7km
獲得標高:10927m
認定時間:88時間28分
仮眠時間:7時間24分(Loudeacでの仮眠時間。実際は復路のMortagne-au-Percheなど、そこら中で寝ているのでもっと長い。12時間ぐらい?)
走行時間率:61.7%
平均速度(ネット):22.5km/h
平均速度(グロス):13.9km/h

PBP2019ではトラッキングのサービスが提供されていたが、完走後に結果も出力してくれた。それがこちら。
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測定誤差の関係で、GPSデータから計算したものとはグロスアベレージに少し差がある。

また、GPSログから走行記録を整理した結果がこちら。
PBP2019_結果
休みすぎ。そして、速度のムラがひどい。
原因は単純で、全体にわたって眠気がひどかった。事前に寝溜めしたつもりだったが、もともと持ち合わせている体内時計がクソすぎることもあり、時差ぼけに対応できていなかったと思う。夕方スタートの経験がほぼ無かったことも一因になっている。
コースそのものはあまり苦にならなかった。単純に、登りがさほど苦にならないような人ならばアップダウンの心配はそれほど無いと思う。反対に登りが苦手であれば、時差ぼけの影響と相まってかなり難易度が高くなるだろう。


【計画】
走行計画は2つ準備した。

プランA:とにかく完走するプラン
PBP2019_プランA

プランB:モン・サン・ミッシェルに寄り道するプラン
PBP2019_プランB

930.6km地点から36kmほどコースアウトしたところに、世界遺産として有名なモン・サン・ミッシェルがある。今年はその傍らに厳島神社の鳥居のレプリカが設置されており、ぜひこの目で見たいと思っていた。そういうわけでプランBを準備した。

結果的に、往路のLoudeac(445km)まではプランBで走れていたが、あまりの眠気でリスタートに時間がかかり、その後もペースはガタ落ち。ブレストではプランBから2時間30分遅れで取り返す目処も立たず、結局プランAに切り替えることとなった。モン・サン・ミッシェルは次回の宿題か?(今回、行かれた方もいた。)

というか、実はそもそも両プランとも、1か所数式を間違えていて45kmを10分で走ることになっている箇所があったりする。影響無かったけど、危なかった・・・。


【準備】
(1)航空券と宿
確実性を求め、今回は(株)グッドウィル・ツァーのPBPツアーを利用した。航空券、宿、空港〜宿のバス、ドロップバッグ、懇親会すべて含めて40万円弱。楽だったが、次回は安価に済ませることを重視して自身で手配すると思う。

(2)スマホ
Google Mapは方向音痴野郎の生命線。ということで、スマホのSIMロックを解除し、SIMカードを事前に買った。
auの場合、条件を満たせばWeb申し込みでSIMロック解除できる。auショップでやってもらうと手数料がかかるらしい。
SIMカードはOrange Holidayのデータ量20GB、通話120分のものを準備した。amazonで5200円だった。

(3)輪行準備
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飛行機用の輪行バッグは、AJ群馬のkatsunoriさんからOS-500をお借りした。他に、緩衝材として大量のプチプチ(幅30cm×20mのロール2本と幅1m×5mのロール半分)、養生テープを使い、各部を保護した。ホイールはホイールバッグに入れたうえでプチプチで包んだ。

梱包に先立ち、サドルを限界まで下げ、リアディレーラーとペダルを取り外した。リアディレーラーはプチプチでグルグル巻きにして養生テープでフレームに固定した。ペダルの取り外しはかなり難航したが、六角レンチに体重を乗せて何とか外した。

OS-500ではサイズの問題で電車輪行できないので、自宅最寄り駅〜羽田空港までは普段の輪行袋で輪行し、羽田空港でOS-500に詰め替えることにした。羽田空港国際線ターミナル駅のホームがかなり広いので、電車を降りてすぐに積め替え作業を行い、空港内はカートを使って楽に移動した。

(4)ドロップバッグ
グッドウィルツアーから事前に送付されてきたドロップバッグに、以下のものを詰め込んだ。
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ドロップバッグはLoudeac(445km地点及び783km地点)で受け取ることができるようになっていた。そこで、シャワーを浴びた後にウェアを着替え、さらに補給食の補充・バッテリー交換することを前提にして準備した。また、現地で自分のドロップバッグを簡単に判別できるよう、取っ手に反射バンドを巻いておいた。
実際に使ったものは、表の「使用」欄に○をつけたものだけだった。

(5)サイコンの準備
現在、サイコンはパイオニアSGX-CA600を使用しているが、デフォルトではフランスの地図データが入っていない。容量の都合で一旦日本の地図データを削除し、以下のデータをダウンロードしておいた。余分なものもあるかもしれない。
  • バス=ノルマンディー
  • ブルターニュ
  • サントル
  • オート=ノルマンディー
  • イル=ド=フランス
  • ペイ・ド・ラ・ロワール
さらに、予備機としてドロップバッグにetrex30xを入れておいた。

(6)その他
あとはいつも通り、走行計画の印刷や充電など。
ちなみに、普段の装備に加えたものは以下の通り。
  • 10000mAhのモバイルバッテリー(普段から5000mAhのモバイルバッテリーを装備しているが、それに加えて装備。5000mAhの方は緊急用としてバッグの奥にしまっておいた。)
  • 予備のタイヤ(どうしても落とせないブルベの場合は国内でも装備する)
  • 100ユーロ札1枚(現金の盗難対策としてツール缶に忍ばせた。実際、日本人参加者で寝ている間に盗難にあった方もいたらしい。)
  • SOY JOY10個(食べ物が絶望的に合わない場合に備え、念のため)
なお、オフィシャルからルートデータは公開されたがキューシートの公開は無かったので、その類は印刷していない。

つづく。